当該画面は、霊験譚に則さず、その内容を象徴的に絵画化したものである。
 画面の主人公となるのは、中央に立つ若い女性である。またその右方には、座る童女が描かれている。
 袴の裾に届くほどの下り髪の女性は、頭光を帯びた観音とおぼしき像を右手に、桜と思われる花を付けた一枝を左手に持つ。画面登場人物が枝を持つ例として、他に西国第二番の龍女が持つ桜、秩父第二十五番の鬼女が持つ紅葉、坂東第十四番の女性が持つ梅が挙げられる。霊験譚の記述によれば、彼女はのちに朱雀帝の后妃となる簑作の娘お茂利である。
 掌に載せた像にお茂利が顔を向けているのと同方向へ、画面右奥の童女も顔を向けている。振袖の袖口に豆(ささげ)を付けるこの童女に関する記載は、霊験譚中には見られない。
白木利幸氏蔵

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