当該画面に登場するのは、矛を持った乾闥婆王(けんだつばおう)である。
 乾闥婆王は木を背にして、雲気の上に立っている。霊験譚の記述によれば、この木は阿薩婆(あさば)の木であることが判る。彼の右手には矛が握られており、その刃の部分は扁額にかかっている。従って、乾闥婆王は扁額よりも手前に描かれていることが判る。
 彼の視線は画面右下端へと注がれ、開いた口と掲げられた右手は、視線の先へ向けて話し掛けているように考えられる。恐らくその相手は徳義上人であると推測することができ、また話の内容は、聖徳太子が百済国王から賜った観音像を上人に授けようという旨であろう。
 当該画面は、阿薩婆の梢に現れた乾闥婆王が徳義上人に対面する場面を絵画化したものである。
白木利幸氏蔵

(C) 2001 International Research Center for Japanese Studies, Kyoto, Japan. All rights reserved