当該画面は、霊験譚に則さず、その内容を象徴的に絵画化したものである。
 画面を構成するのは二者。床几(しょうぎ)に腰掛ける画面右方の男性と、杭を抱えて膝を突く画面左方の男性である。両者の視線は、画面右上端と左下端を結ぶ対角線上に視線が交わされている
 烏帽子直垂(ひたたれ)姿の男性は、頼朝の家臣の千葉介常胤であると考えられる。彼は太刀を佩き、中啓(ちゅうけい)を携えた姿で描かれる。また画面左下方の従者とおぼしき男性に関して、霊験譚の記載はない。彼が右腕に抱える杭の正面には「青蓮千葉寺御再営」、側面には「奉行 千葉介常[胤]」と記されており、頼朝が観音力によって東国の武士を味方に付けて、源氏の治世となった報恩のために、建久三年(1192)常胤に命じて当寺の伽藍を再営させたことを示唆している。
白木利幸氏蔵

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