この画面を構成するのは、巻物に視線を落とす男性と、花簪(はなかんざし)を挿した下げ髪の女性の二者である。
 脇指を差した画面右下方の男性は、当地の領主である小田将治である。彼は経机を前にして、巻物を広げた姿で描かれる。霊験譚の記述によれば、冷夏が引き起こした飢饉で苦しむ人民を救うため、将治は三宝に祈願したとある。
 また画面左方に立ち、将治に視線を注ぐ女性は、小田川の淵から甘露が湧くことを示した朝日の前という美女である。袖口には豆(ささげ)が付けられており、年少者であることを示すものであるが、秩父第二十四番に見える禿(かむろ)のように童女の姿では表現されていない。彼女の左手は胸前に掲げられ、右手は画面左方を指す。この方向に小田川の淵があると推測することができる。
 当該画面は、将治の祈念に応えて朝日の前が甘露の在処を示すために現れた場面を絵画化したものである。
白木利幸氏蔵

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