この画面を構成するのは、左手首に数珠を掛けて合掌する僧形の男性と、滝の流れに姿を現す童子の二者である。
 滝壺の側で引敷(ひきしき)の上に坐す画面右下方の僧は、水想観を行う行基である。彼は、僧綱襟(そうごうえり)を付ける高僧の姿で表現されている。行基の視線は画面左上方へと注がれており、その先には一人の童子が描かれる。稚児髷(ちごまげ)を結い、袖口に豆(ささげ)を付ける彼は、霊験譚の記述によれば行基の前に忽然と現れた観音である。童子形をとる観音の化身は、西国第三番、西国第二十一番、秩父第二十番、坂東第十三番でも確認することができる。
 観音と行基の両者は、画面左上端と右下端を結ぶ対角線上に配され、視線もその線上に交わされている。
白木利幸氏蔵

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