当該譚は汐呼鐘(しおよびがね)の名称の由来を記すものであり、坂東第二十三番、坂東第二十四番、坂東第三十二番と同様に観音の霊験を説くものではない。
 画面の大きな部分を占めるのは、画面左方から押し寄せる大波である。画面左下方には、波に薙ぎ倒された木や押し潰された家の屋根が描かれる。画面右下方の三者は村人であると考えられる。画面中央の男性は手を上げて口を開けて走り、画面右方の女性は着物の裾を絡げて波へ顔を向けたまま、画面右端へと逃げるように描かれている。また彼らの足元では一人の男性が転倒している。
 当該画面は、鐘を撞くと麓まで海水が逆流するという、当山の鐘に関する縁起の一場面を絵画化したものである。
白木利幸氏蔵

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