この画面を構成するのは、雲気に乗る画面右上方の人物、画面下方の刀を持つ男性と彼に首を押さえられた男性の三者である。
 坂東第二十三番、坂東第二十五番、坂東第三十二番と同様に、当該譚は観音の霊験を説くものではなく、堂内の杉戸に描かれた絵柄の由縁を記すものである。その記述によれば、この杉戸には多聞天と芋の茎を付けた牛が描かれるという。
 鎧兜を着けて、左手に宝棒を持つ画面上方の人物が多聞天である。坂東第十七番に現れる千手観音と同様、腕に掛けた天衣(てんね)の端を浮き上がるようにたなびかせ、雲気の上に乗って中空に浮くように表現される。彼が見据える先には、眉根を寄せて口許を歪めた形相の男性が、右手に刀を持ち、左手でもう一人の男性を取り押さえている。当該譚に名前等の直接の記載はないが、この男性が当山の普請金を盗もうとした盗賊であろう。また画面左下方の男性は芋の茎に金を隠し、それを牛に付けて牽いていた人物であると考えられる。当該画面に牛は登場しないが、この画面は普請金を盗もうとした盗賊を多聞天が取り押さえようとする場面を絵画化したものであろう。
白木利幸氏蔵

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