霊験譚の記述によれば、右手で掴んだ念珠を振り上げ、左手で袖口を押さえる画面右方の僧形の男性は、那須野ヶ原の殺生石を打ち砕いた玄翁和尚である。彼が手にする念珠は、当寺の観音の化身より授かった降魔の念珠である。和尚の僧衣や袈裟は、坂東第十七番の弘法大師のものに類似する。
 また画面左端に見える岩が、飛ぶ鳥や走る獣などを死に至らしめたという殺生石であると考えられる。岩からは、煙らしきものが立ち上っている。この煙は、殺生石が霊気を発していることの表現として用いられると考えられる。
 当該画面は、玄翁和尚が念珠で殺生石を砕こうとする場面を絵画化したものである。
白木利幸氏蔵

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