画面を左右に横切る龍の背に乗る人物が、霊験譚の主人公である勝道上人である。右手で杖を握り、被った編笠の縁に左手を添えた上人は、手甲・脚絆を着け、笈を背負う旅姿で現されている。
 登場人物が龍の背に乗る構図は、秩父第二十九番にも見られる。当該霊験譚中に龍が登場する記述は確認できないが、当寺の縁起などには蛇が登場する。上人が麓の大谷川を渡るのに難渋している折、深蛇大神が現れて蛇を橋として川に架けたとあり、当該画面はこの場面を絵画化したものであろう。
 画面右端に見える松が植わった岩場は大谷川の川岸であり、川の流れの上に龍が身を渡しているという構図を推測することができる。
白木利幸氏蔵

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