画面左下方で合掌する僧形の男性は、観音に祈念する弘法大師である。
 霊験譚の記述によると、本尊の十一面観音が山深く万人が参詣するのには難しい所に祀られているので、大師が観音に御姿を現すよう祈ったところ、杉の大樹に千手観音が姿を現したとある。
 画面右上方の千手観音は、大師の祈りに応えて影向したものである。観音は頭光を帯び、胸飾(きょうしょく)に瓔珞(ようらく)を付け、胸前で中央手を合掌させ、各々の手に錫杖や開敷蓮華(かいふれんげ)などの持物を携える姿で表現される。腕に掛けた天衣(てんね)の端は浮き上がるようにたなびき、雲気の上に乗って中空に留まる。また右脇の木は、観音が現れた杉の大樹である。観音と大師の二者は、各々画面右上端と左下端を結ぶ対角線上に配されている。
 当該画面は、観音が大師の前に姿を現したという霊験譚の一場面を絵画化したものである。
白木利幸氏蔵

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