当該画面は、霊験譚に則さず、その内容を象徴的に絵画化したものである。
 この画面に登場する人物は二者。画面右方、傘を差して立つ若い女性と、画面左方、しゃがんだ体勢のまま女性を振り仰ぐ男性である。
 霊験譚の記述には、当該画面に登場する男女に関する記載は見られない。石持(こくもち)の付いた振袖を着る女性は、右手に蛇の目傘を差し、左手に梅とおぼしき枝を持つ。一方の俳諧師(はいかいし)風の男性は、投げ頭巾を被って小刀を差し、五つ紋の道服を着る。彼は右手で筆を持ち、左手で画面左下方を指差している。道服姿の男性の示す先には、大きな丸い石が描かれている。この石が、霊験譚の表題に掲げられる七ツ石である。神奈川県立博物館本および廣重美術館本には、石の下部に黒色のぼかしが加えられているが、法楽寺本では上部に黒色のぼかしが施されている。また、三本ともに石の手前、画面左端には「弘明寺執事」と裏に記された立て札が描かれている。
 彼ら両者の視線は、画面右上端から左下端を結ぶ対角線上で交わされている。
法楽寺蔵

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