飯山権太夫(いひやまごんだいふ)
 当山(たうざん)の本尊(ほんぞん)ハ大和(やまと)長谷寺(はせでら)の仏材(ぶつざい)を以(もつ)て行基(ぎやうぎ)の刻(こく)するを領主(れうしゆ)飯山氏(いゝやまうぢ)権化(ごんげ)より感得(かんとく)して信心(しん/\)厚(あつ)く終(つひ)に伽藍(がらん)を建立(こんりう)なせしかハ当所(たうしよ)を飯山(いゝやま)といへり昔(むかし)当寺(たうじ)に霊鐘(ふしぎのかね)あり是(これ)ハ坂東札所(ばんどうふだしよ)の三鐘(ミつかね)にてその二ツハ筑波(つくば)と千葉(ちハ)にあり此(この)鐘(かね)陀羅尼(だらに)と響(ひゞ)く器(れいき)なりしが住僧(ぢうそう)おこたりたることを在(あり)たる夜(よ)雷鳴(らいめい)してふしぎと失(うせ)ぬそれより峯(ミね)の松風(まつかぜ)その鐘(かね)の音(ね)をするもまた奇(き)なりしが近代(きんだい)の住持(ぢうぢ)法器(ほうぎ)の失(うせ)たるをかなしミて本尊(ほんぞん)を祈(いの)り新(あらた)に鐘(かね)を鋳(い)てかの空楼(くうろう)に(かつ)し処(ところ)ふしぎと夢(れいむ)の告(つげ)にまかせて地(ち)を七尺余(よ)掘(ほり)て見(ミ)れバ忽然(こつぜん)と古(むかし)の鐘(かね)あらハれ出(いで)住持(ぢうぢ)歓喜(くわんぎ)のあまり新楼(しんろう)を営(いとなミ)てこれに(かづ)けれバ皆(ミな)人(ひと)飯山(いゝやま)の隠鐘(かくれかね)と尊称(そんしやう)せり

廣重美術館蔵

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