田代冠者(たしろのくわんじや)信綱(のぶつな)
 当山(たうざん)の濫觴(はじめ)ハ天元(てんげん)年中(ねんぢう)横川(よかハ)恵心院(ゑしんいん)の源信僧都(げんしんそうつ)愛甲郡(あいかうこふり)津久居(つくゐ)の里(さと)の辻堂(つぢだう)に止宿(ししゆく)せしとき忽然(こつぜん)と白髪(はくはつ)の異人(いじん)あらハれて我(われ)ハ龍王(りうわう)の使(つかひ)にて汝(なんぢ)を待(まつ)こと久(ひさ)し早(はや)く救世(ぐせ)の像(ぞう)を刻(こく)せよ其(その)御衣木(ミそぎ)ハ近(ちか)き川の洲(す)に栴檀木(せんだんぼく)ありと告(つげ)によつて翌朝(よくてう)川の洲(す)を尋(たづ)ねけるに数匹(すひき)の亀(かめ)一木(いちぼく)を守(まも)るがゆゑ是(これ)こそ木(れいぼく)なれとたつとび手自(てづから)五尺(ごしやく)四寸の千手(せんじゆ)の像(ぞう)を造(つく)りて辻堂に安置(あんち)せしにその応験(おうげん)あらたなれバ後(こう)年田代信綱ことに信仰(しんかう)してふしぎの験(れいげん)を蒙(かうむ)りたるによつて伽藍(がらん)造営(ぞうえい)等(とう)せしかバ終(つひ)に当地(たうち)に移(うつら)し今(いま)も田代堂といひ伝(つた)ふること誠(まこと)に信心(しん゛/\)の徳(とく)末世(まつせ)に空(むな)しからず

神奈川県立歴史博物館蔵

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