小磯の寡婦
 大宝二年(702)相模国小磯の浜で、独り身の女性の汐汲む桶に不思議にも入っていた霊像が当山のはじまりである。しかし、その女性は、何の仏というのかも知らず、ただ信心をしていた。
 ある時、行脚の僧が来たので見せたところ、「これこそ聖徳太子の刻まれた聖観音の像であることは明らかである」と言ったので、ますます貴んで香花を供えた。その女性は年老いて、自ら世を去る日を知り、その日に身を清め、潮がたれる襷を尊像の御手にかけ、「この苦海から連れ出して、極楽へ導いてください」と御名を唱えながら大往生を遂げた。当寺の鎮守潮司大権現はこの海女を祀っているという。
 その後、行基が五尺余りの立像を刻んで、海女が感得した小像を胎内に籠めた。今の本尊は、すなわちこれである。

神奈川県立歴史博物館蔵

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