「米欧回覧実記」とは

明治維新によって成立した新政府は、先進欧米諸国から近代国家建設の方法を学ぶために外国人専門家の招聘や日本人留学生の派遣などの事業を遂行したが、明治初年に実施された最大の事業は、明治維新の功労者であり新政府の重要人物による海外視察であった。後に『米欧回覧実記』によって記憶に留められることになるこの使節団の使命は、幕末に締結された諸外国との不平等条約の改正にあったが、同時に、「殖産興業」「富国強兵」という明治新政府の国策の基礎となるべき社会・経済システムの調査と情報収集にあった。

1871(明治4)年11月12日に日本を出発して1873(明治6)年9月13日に帰国した海外使節団の代表を務める特命全権大使は右大臣の岩倉具視、副使は木戸孝允、大久保利通、伊藤博文、山口尚芳。総勢50名の団員に加えて、中江兆民、津田梅など後にさまざまな分野で活躍することになる人々約60名が各国への留学生として参加した。

2年間に及ぶ海外視察報告は、太政官少書記官の久米邦武によって編修され『特命全権大使米欧回覧実記』として1878(明治11)年に博聞社から全5冊全100巻が刊行された。